外国人材の転職時に有用な就労資格証明書について

就労資格証明書について解説します!

ご覧いただき、ありがとうございます。行政書士・特定社会保険労務士の佐藤 安弘です。

 

今回は、就労資格証明書に関して、雇用する側の企業および在留カードを保有している外国人の方に向けた記事を掲載いたします。

今回の記事・動画でわかること

 

☑日本人の転職と外国人の転職における注意点

☑ケーススタディ:転職組の外国人を働かせていたら、在留期限トラブルが!?

☑トラブルを避けるために入社前に取得しておいたほうがよい就労資格証明書

☑就労資格証明書まとめ

ここが違う!日本人と外国人の転職!

早速ですが、日本人の一般的な転職フローは

 

1・在職中に転職活動

2・内定

3.入社

4.定年まで就業又は退職(1~4をループ)、独立

 

ですね。

このフローは外国人材も基本的に変わりません。自己実現のためや、承認欲求のためなど個々の違いはあれど、就職した会社と一生を添い遂げる、いわゆる終身雇用という概念は、最近の日本や世界の雇用慣行の中では稀有なケースであるかもしれません。

 

唯一違うのは、以前の記事・動画でも説明したとおり、外国人には在留資格という入管法上の概念があるのです。※在留資格の概要に関する記事はこちら

ケーススタディ 転職組の外国人材のトラブル

 

 ここからは、アレックス君の事例で解説します。フィクションです。

【ケーススタディ】

・アレックス君(28歳・イギリス国籍)

・日本語能力検定N2級を保有

・在留資格:来日後4年(2016/4~2019/03)は【留学】→在学中に就職が決定し日本企業A社に入社(2019/04~)

・A社での職務内容は外国語(英語)を用いて、外国人に対するスマートフォンの販売及びそれに付随する契約内容の説明等の事務処理業務

・学校卒業前に【留学】→【技術・人文知識・国際業務】への在留資格となった。在留期間は2019/04~2022/03の3年間

・A社での業務に不満はなかったものの、賃金などの部分でもっと高待遇なB社へ行きたくなり、採用面接を経て、内定、B社へ入社(2020/04)となった。なお、B社での業務内容はA社同様にスマートフォンの販売及びそれに付随する契約内容の説明等の事務処理業務であった。ただ、A社と異なり、それだけに専念できるわけではなく、併設している飲食店の調理や接客業務にも従事していた。

・2022/01 アレックス君は入管へ在留期間の更新許可申請をしたが、審査の結果、在留期間の更新は認められなかった。2022/04以降在留していればオーバーステイであるし、就労していれば不法就労、B社側も不法就労助長罪に問われかねない。

・B社としても戦力となっているアレックス君が2022/03で退職してもらうと困る。

上記ケースのいったい何が問題であるのか?

まず、上記ケースでアレックス君、B社が困っている原因は何でしょうか?遡って順番に解説していきます。

 

まず、一番困っているのはアレックス君&B社で『2022/04以降、アレックス君は日本に在留できない(≒働かせることができない)』ですね。

 

この原因は、入管が『在留期間の更新許可申請に対して不許可処分としたこと』ですね。本来であれば更新許可が下りれば、2022/04以降もアレックス君はB社で働けたわけですから。

 

では、何故、入管は更新許可申請を不許可処分をしたのでしょうか?ここが就労資格証明書の性質を理解するために重要な要素となります。答えは、以下です。

入管は『2019/04以降の在留資格 技人国はA社の規模、A社での業務内容を前提に付与した。アレックス君の転職先のB社について審査を行ったわけではない。更新許可申請の際にB社の規模、業務内容から審査し、技人国での更新は不許可とした』と主張します。

 

少しこんがらがってきますので時系列を表にしました。

番号 時系列 在留資格 実際の動き 備考
2016/04 留学 日本語学校、専門学校、大学等教育機関に在籍  
2018/08 留学 在学中に就職活動、A社から内定  
2019/01 留学 A社で4月以降に労働するために入管へ在留資格の変更許可申請

審査の結果2019/04~

技人国(3年)が付与された

2019/04 技術・人文知識・国際業務 A社へ入社  
2020/01 技術・人文知識・国際業務 B社から内定  
2020/03 技術・人文知識・国際業務 A社を退職  
2020/04 技術・人文知識・国際業務 B社へ入社  
2022/01 技術・人文知識・国際業務 在留期限が近付いてきたので入管へ在留期間の更新許可申請

審査の結果

B社での就労は技人国カテゴリに該当しないため不許可となった。

上記のケースで何をしていたら、トラブル防止となったか

ここからが、解答編です。

 

上記のようなトラブルを起こさないために、注意すべきであったことは、

 

B社の内定時(表でいうと5の時点)の段階で入管へ就労資格証明書の交付申請を行っておくべきであった

 

上記が答えです。

就労資格証明書の詳細解説

それでは、就労資格証明書について解説します。

 

根拠となる条文

(就労資格証明書)

入管法第19条の2

  出入国在留管理庁長官は、本邦に在留する外国人から申請があつたときは、法務省令で定めるところにより、その者が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を証明する文書を交付することができる。

 2 何人も、外国人を雇用する等に際し、その者が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動が明らかな場合に、当該外国人が前項の文書を提示し又は提出しないことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。

 

ここで条文を読んでもイマイチ、ぱっとしないですね。

 

就労資格証明書は平たく言うと転職許可証みたいなものです。

 

日本人と異なり就労ビザ(業務限定就労可能資格)は、就職先の会社でどのような業務につくのか?が重要です。ケースではA社での労働は技人国に該当と判断されましたが、更新許可申請時点(表の8時点)でB社での就労は技人国に不該当とされました。A社とB社、同じ会社ではありませんし、B社での就労も併設飲食店での調理や接客などがあった実態から、結果が異なるのもしょうがないですね。

 

これを避けるためには、B社へ内定した時点(表でいうと5の時点)で就労資格証明書交付申請をしておくべきでした。

先ほどお伝えしたようにいわば入管からの転職許可証ですので、申請イメージはこんな感じです。

『入管様へ

技人国の在留資格を与えられている私、アレックスですが、このたび、B社へ転職することを決意しました。つきましては、B社での業務内容や、B社の規模、B社が私を採用した理由は○○○○です。引き続き技人国カテゴリーで就労できるか心配ですので、審査のうえ、就労可能であれば、就労資格証明書をください』

 

このイメージで申請して、交付決定となればアレックス君→B社へ就労資格証明書を渡して入社ですね。在留期間の更新許可についても問題なければ、更新となります。

 

このようなトラブルを無くすために

在留資格制度が複雑です。日本人にとっても然り、ましてや外国人の場合は猶更ですね。

 

よくある流れで、日本企業『就労ビザ持ってる?』→外国人材『持ってます!』→日本企業『よし採用!』というものがあります。日本企業側も外国人材側も就労ビザという単語を用いているため、詳細が分かっていないことがうかがえます。

 

上記の流れに疑問を抱いたり、手続き上のアドバイスができるのは専門家のみですね。

具体的な採用プロセスとしては、

1・日本企業『保持している在留資格はなんですか?(在留資格が業務限定就労可能資格又は地位等類型在留資格、就労不能資格の確認)』

2・外国人『○○○○(業務限定就労可能資格)です』

3・日本企業『それでは、○○○○の在留資格で、当社の業務に従事することが可能であることを確認したいので就労資格証明書交付申請手続きを入管へ行ってください。会社としても、手続きについて協力致します。就労資格証明書の交付がされれば、その時点又は○月○日、いずれか遅い方からの入社となります』

 

このような採用スキームとしたほうがトラブルは避けられるでしょう。

注意点

就労資格証明書は地位等類型資格(=無制限就労可能資格)の分類にある『永住者』『日本人の配偶者等』、『定住者』等には無関係です。無制限就労可能資格なので。

法19条の2第2項は無制限で就労可能と分かっているのに、就労資格証明書を出さないことを理由に不利益取り扱いしてはイカン。という趣旨ですね

まとめ

☑就労資格証明書がないと、転職先及び外国人材にとって不利益なことが起きる場合がある。

☑就労資格証明書を事前に取得しておくことで転職後の在留期間更新許可申請の際の不許可リスクを軽減できる

☑内定を出す際には就労資格証明書の交付を確認することを停止条件に!

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